仕事から離れる勇気

仕事から離れる勇気

一歩、仕事から離れる勇気を持つことが、こんなにも難しいとは思っていませんでした。長い間、私はキャリアに全力を注ぎ、「頑張ること」が自分のアイデンティティーだと信じていました。しかし、その頑張りが私を少しずつ蝕んでいることに気づいたのは、体がついに悲鳴を上げた時でした。

プロジェクトが山場を迎え、連日の長時間労働とプレッシャーの中で、私は次第に自分を見失っていきました。朝起きるのが辛く、仕事に行くことに恐怖すら感じるようになっていました。それでも、「ここで休んだら負けだ」と自分を奮い立たせていました。そうして無理を重ねた結果、ある日、体と心が同時に悲鳴を上げ、ついに医師から「休職が必要だ」と告げられました。

最初は、自分が仕事を離れるなんて考えられませんでした。チームに迷惑をかけてしまう、キャリアに傷がつく、といった不安ばかりが頭をよぎりました。しかし、心の奥底では、今休まなければ自分が壊れてしまうという恐れもありました。この葛藤の中で、ついに休職を決意しました。それは、私にとって大きな勇気を振り絞った瞬間でした。

休職が始まった初日は、長年続けてきたルーチンがないことに戸惑いを覚えました。自宅で何をするでもなく過ごし、時間がただ過ぎていくのを感じていました。しかし、次第にその時間が自分にとってどれほど必要なものであったかを理解し始めました。

毎朝、心の重荷が少しずつ軽くなっていくのを感じました。私は日常の中で、これまで見落としていた小さな喜びを再発見しました。家の近くの公園で散歩し、風に揺れる木々の音や、花の香りを楽しむ時間が、心に癒しをもたらしてくれました。こうしたシンプルな体験が、どれほど心を落ち着け、満たしてくれるかを実感しました。